中華民国法律
特許法 (第81条〜第100条)
第81条
次の各号のいずれかの事由がある場合には、何人も同一の特許権に対して、同一の事実につき、同一の証拠をもって、再度無効審判を請求することはできない。
1. 他の無効審判請求がかつて同一の事実につき同一の証拠をもって無効審判を請求し、審査を経て無効審判が成立しなかった場合。
2. 知的財産案件審理法第33条の規定に基づき、知的財産裁判所に提出した新たな証拠が、審理を経て理由がないと認められた場合。
第82条
発明特許権が無効審判の審査を経て成立した場合、その特許権を取り消さなければならない。その取消は各請求項につきそれぞれ行うことができる。
発明特許権が取り消された後、次のいずれかの事由に該当する場合、その取消が確定したものとする。
1. 法に基づき行政救済を提起しなかった場合。
2. 行政救済を提起し、却下が確定した場合。
発明特許権の取消が確定した場合、特許権の効力は初めから存在しなかったものとみなす。
第83条
第57条第1項の延長が許可された特許権存続期間における無効審判請求の処理は、本法の発明特許権無効審判に関する規定を準用する。
第84条
発明特許権の許可、変更、延長、延期、譲渡、信託、実施権の許諾、強制実施権の許諾、取消、消滅、質権の設定、無効審判審決及びその他の公告すべき事項は、特許公報に公告しなければならない。
第85条
特許専門機関は特許権簿を備え、特許の許可、特許権の異動及び法で定める全ての事項を記載しなければならない。
前項の特許権簿は、電子方式により、国民に閲覧、抄録、撮影又はコピーさせることができる。
第86条
特許専門機関が本法により公開、公告すべき事項は、電子方式でこれを行うことができる。その実施日は、特許専門機関がこれを定める。
第87条
国家の緊急危機又はその他の重大な緊急事態に対応するため、特許専門機関は緊急命令又は中央目的事業主務機関の通知に基づき、必要な特許権の強制実施権を設定し、並びに特許権者にその旨を速やかに通知しなければならない。
次の各号のいずれかの事由があり、強制実施権の設定が必要な場合、特許専門機関は請求により強制実施権を設定することができる。
1. 公益を増進するための非営利目的の実施。
2. 発明特許権又は実用新案権の実施による従来の発明特許権又は実用新案権の侵害が不可避であり、かつ前記従来の発明特許権又は実用新案権と比べて明らかに経済的意義を有する重要な技術上の改良であるとき。
3. 特許権者に競争制限又は不正競争の事由があり、裁判所による判決又は行政院公平交易委員会による処分がなされているとき。
半導体技術に係る特許について強制実施権を請求する場合、前項第1号又は第3号の事由を有する場合に限る。
特許権につき第2項第1号又は第2号の規定により強制実施権を請求する場合、請求者が合理的な商業条件をもって相当の期間で協議したにもかかわらず、実施許諾の協議ができなかった場合に限る。
特許権につき第2項第2号の規定により強制実施権を請求する場合、その特許権者は合理的な条件を提示し、請求者の特許権につき強制実施権を請求することができる。
第88条
特許専門機関は前条第2項及び第90条の強制実施権の請求を受理した後、特許権者に通知し、並びに期限を定めて答弁させなければならない。期限が過ぎても答弁していない場合、直ちに審査に付することができる。
強制実施権による実施は、国内市場の需要への供給を主としなければならない。但し、前条第2項第3号の規定により強制実施権を設定した場合はこの限りではない。
強制実施権の審決は書面をもって行い、並びにその実施権設定の理由、範囲、期間及び支払うべき補償金を明記しなければならない。
強制実施権は、原特許権者がその特許権を実施することを妨げないものとする。
強制実施権は、譲渡、信託、承継、許諾又は質権の設定をすることができない。但し、次の各号のいずれかの事由がある場合はこの限りではない。
1. 前条第2項第1号又は第3号の規定による強制実施権が、該特許の実施に関連する営業と併せて讓與、信託、承継、許諾、又は質権の設定をするとき。
2. 前条第2項第2号又は第5項の規定による強制実施権が、強制実施権者の特許権と併せて譲渡、信託、承継、許諾、又は質権の設定をするとき。
第89条
第87条第1項の規定に基づき特許権の強制実施権を設定する場合、中央目的事業主務機関が強制実施権の必要が無いと認めるとき、特許専門機関はその通知に基づき強制実施権を廃止しなければならない。
次の各号のいずれかの事由がある場合、特許専門機関は、請求により強制実施権を廃止することができる。
1. 強制実施権の設定事実の変更により、強制実施の必要がなくなったとき。
2. 強制実施権者が実施権の内容に従って適切に実施していないとき。
3. 強制実施権者が特許専門機関の審決に従って補償金を支払っていないとき。
第90条
製薬能力がない又は不十分な国が、エイズ、肺結核、マラリア又はその他の伝染病の治療に必要な医薬品を入手することを補助するため、特許専門機関は、請求により、当該国が必要な医薬品を輸入できるよう請求者に特許の強制実施権を設定することができる。
前項規定により強制実施権を請求する場合、請求者が合理的な商業条件をもって相当の期間で協議したにもかかわらず、実施許諾できなかった場合に限る。但し、必要な医薬品が輸入国で既に強制実施権が許可されている場合には、この限りではない。
輸入国がWTO加盟国の場合、請求者は第1項により請求するとき、輸入国が既に次の事項を履行しているという証明文書を提出しなければならない。
1. TRIPS理事会に、当該国が必要としている医薬品の名称及び数量を既に通知している。
2. TRIPS理事会に、当該国が、製薬能力がない又は不十分であるため、輸入を希望していることを既に通知している。但し、後発開発途上国である場合、請求者は証明書類を提出する必要はない。
3. 必要な医薬品が当該国で特許権を取得していない、又は特許権を取得しているが、既に強制実施権が許可されている又はまもなく許可される。
前項にいう後発開発途上国とは、国連が発布する後発開発途上国である。
輸入国がWTO加盟国ではなく、後発開発途上国若しくは製薬能力がない又は製薬能力が不十分な国である場合、請求者は第一項により請求するとき、輸入国が既に次の事項を履行していることを証明する文書を提出しなければならない。
1. 書面で中華民国の外交機関に対し必要な医薬品の名称及び数量を提出している。
2. 必要な医薬品の再輸出防止に同意している。
第91条
前条の規定により強制実施権で製造された医薬品は全て輸入国に輸入しなければならず、且つその実施権により製造された数量は、輸入国がTRIPS理事会又は中華民国の外交機関に通知した必要な医薬品の数量を超えてはならない。
前条の規定により強制実施権で製造された医薬品は、その外側のパッケージに特許専門機関の指定した内容に従ってその実施権の依拠を表示しなければならない。そのパッケージ及び色又は形状は、特許権者又はその実施許諾を受けた者が製造した特許医薬品と区別できるものでなければならない。
強制実施権許諾の実施権者は特許権者に妥当な補償金を支払わなければならない。補償金額は、特許専門機関が、必要な医薬品に関連する医薬品特許権の輸入国における経済価値、及び国連が発布した人間開発指数を参考にして審決しなければならない。
強制実施権許諾の実施権者は該医薬品を輸入する前に、ウェブサイトで該医薬品の数量、名称、目的地及び特許医薬品と区別できる特徴を公開しなければならない。
前条の規定により強制実施許諾で製造輸出された医薬品は、その検査登録は、薬事法第40 条の2 の第2 項の規定による制限を受けない。
第92条
発明特許に関する各種申請について、申請人は申請時に、申請手数料を納付しなければならない。
特許を許可された場合、発明特許権者は証書費及び特許年金を納付しなければならない。特許権存続期間の延長、延期が許可された場合、延長、延期期間内においても特許料を納付しなければならない。
第93条
発明特許年金は公告の日から起算し、1 年目の年金は、第52 条第1項の規定により納付し、2 年目以降の年金は、それぞれの期間満了前に納付しなければならない。
前項の特許年金は、数年分を一括して納付することができ、特許年金の改定があった場合も、その差額を追納する必要はない。
第94条
発明特許の2 年目以降の年金について、年金を納付すべき期間内に納付しなかった場合、期間満了後の6 ヶ月以内に追納することができる。但し、その年金の納付は、本来納付すべき年金以外に、比例方法にて年金を追加納付しなければならない。
前項の年金の比例方法による追加納付とは、年金を納付すべき期限を過ぎた場合、月毎に年金を追加納付することを指し、1 ヶ月遅れる毎に20%が加算され、最高で規定特許年金の2倍の金額を追加納付するものとする。その納付期限の遅延期間が1 日以上1 ヶ月以内である場合には、1 ヶ月とする。
第95条
発明特許権者が自然人、学校又は中小企業である場合、特許専門機関に特許年金の減免を申請することができる。
第96条
発明特許権者はその特許権の侵害した者に対して、その侵害の排除を請求することができる。侵害のおそれがある場合、その防止を請求することができる。
発明特許権者は故意又は過失によりその特許権を侵害した者に対して、損害賠償を請求することができる。
発明特許権者は、第1 項の請求を行うにあたり、特許権の侵害に係る物品又は侵害行為に従事した原料又は器具について、廃棄処分又はその他の必要な処置を請求することができる。
専用実施権者はその実施権の範囲内で、前3 項の請求をすることができる。但し、契約で別途約定がある場合には、その約定に従う。
発明者の氏名表示権が侵害された場合、発明者の氏名の表示又はその他名誉回復のために必要な処分を請求することができる。
第2 項及び前項に規定する請求権は、請求権者が損害及び賠償義務者を知ったときから2 年以内に行使しなければ消滅する。該侵害行為があったときから10 年を超えた場合も同様とする。
第97条
前条により損害賠償を請求するときは、次の各号のいずれかの方法によりその損害額を算定することができる。
1. 民法第216 条の規定による。但し、その損害を証明するための証拠や方法を提供できない場合、発明特許権者はその特許権の実施により通常得られる利益から、損害を受けた後に同一の特許権を実施することにより得られる利益を差し引いた差額を、その損害額とすることができる。
2. 侵害者が侵害行為により得た利益による。
3. 該発明特許の実施を許諾するときに得られるロイヤリティーに相当する金額をその損害額とする。
第98条
特許物品には特許証番号を標示しなければならない。特許物品上に標示することができない場合は、ラベル、パッケージ又はその他の他人の認識を惹起するに足りる顕著な方式でこれを標示することができる。標示を付加していなかった場合は、損害賠償を請求するときに、侵害者が特許物品であることを明らかに知っていた、又は知り得たことを立証しなければならない。
第99条
製造方法の特許により製造された物品が、その製造方法の特許出願前に国内又は国外にて見ることがなかった場合、他人が製造した同一の物品は、その方法特許により製造されたものと推定する。
前項の推定は、反証を提出してこれを覆すことができる。被告が、該同一の物品を製造した方法と製造方法特許とが異なることを証明した場合、反証を提出したものとみなす。被告が立証の際に掲示した製造及び営業上の秘密に対する合法的権益は、十分に保障されなければならない。
第100条
発明特許に係る訴訟事件について、裁判所は、判決書の正本を一部、特許専門機関に送達しなければならない。